(その優しさがいつか武器になる、頑張れもーと君!)
今年の7月31日、芝田もーとは5回判定の敗戦後、引退を決意した。
生涯戦績、15戦4勝(2KO)10敗1分、見ても分る通り飛び抜けて何かを残せたボクサーではなかった。
ただスピードやパワーなど、ボクシングの能力は決して低い選手ではなかったし、練習もよくやっていた。なにより、もーと君はボクシングを楽しんでいた。
会長に声をかけられた事がきっかけで八王子中屋ジムにやってきた、と言うもーと君がプロになって5年間、彼はあらゆる場所で試合を行ってきた。
地方で秋田や高知、彼の地元である愛媛、関東の中でも後楽園ホールを始めに、新宿FACE、さいたまスーパーアリーナや代々木第一体育館では世界戦の前座も経験している。彼程、様々な場所で試合を経験出来たボクサーはそう多くはないはずだ。
どの試合でも光るいい所は見せるのに、どうしても勝ちきることが出来なかった。しかし、勝っても負けてもさわやかだったもーと君、その清々しさは確かに彼の魅力であった。
が、プロという世界ではそれではダメなのだろう、彼にはボクサーとして最も必要な、勝利への執念、というものが今一歩、どうしても足りなかったのだ。もしも、彼が楽しむ以上に勝利を欲したならば、彼のボクシングキャリアは大きく変わっていたのかもしれない。彼がこの競技を本当に愛していたからだ。
それにしても、と思う。
今まで、ジムには沢山の練習生、プロボクサーが在籍していた。しかし彼程、他人の為に頑張れる人間はそうはいなかった。
八王子での興行時、彼は毎回の様にリング設置や撤去、試合中の雑用などを、いやな顔一つ見せずに手伝ってくれた。普段、プロとしての意識も低く、試合が決まるまでまともに練習しない、そういった雑用ごとを頼まれる時にだけ、自分はプロなのだから、という顔をして陰に隠れる選手も過去にいた中でのことだ。
別に彼の様に毎回手伝えと言っているわけではない。そもそも彼の様に周りを気遣い、尚かつ何でもがんばってくれる人間など、そうめったにいないのだ。彼の優しさ、思いやりの深さは本物だった。
僕はそんなもーと君の優しさが本当に好きだったのだ。
12月27日、そんなもーとくんは地元愛媛に戻ったそうだ。
これからも何らかの形でボクシングには関わっていくつもりだ、と聞いた。
もしも、もーと君が指導者としてもボクシングに接するのなら、彼はきっとよい指導者となるのではないかと思う。
あらゆる現役の経験が彼にはあり、何より人のことを思いやる”優しさ”があるからだ。自分の勝利にはどん欲にはなれなかったかもしれないが、他人の為なら自分を投げうることが出来る、それが”芝田もーとの才能”だったのだ。
もしかすると指導者に必要なものはテクニックや、戦術を教えることにあらずそれ以上に、まず”選手の為に”と思える優しさなのかもしれない。
芝田もーとはその現役時代、勝負へのこだわりのいたらなさがあった、が、それ以上にその優しさを残して八王子中屋を去っていった。それを、ジムの皆は知っている。
もーと君、お疲れさま!
*もーと君のジムブログに最後の挨拶が載っていました。皆さんもご覧になって下さい!
芝田もーと公式ブログーーー8年間!
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